「戦略的大学連携支援事業」の終了にあたって
※これは文部科学省戦略的大学連携支援事業(平成20 年度採択)の成果報告書のため、掲載されている一部内容は、平成22 年度末現在のものです。
本年度が最終年度となる「大学間地域ネットワーク構築による高等教育の質保証と人材育成の実質化」プログラムは、平成20年11月長野県内の大学で構成する「長野県大学連絡協議会」を母体として『高等教育コンソーシアム信州』を立ち上げ、長野県内の8大学が連携を深めながら推進してきました。
本取組では、まず「大学間ICTネットワーク講義・会議システムの整備」を推進し、連携を進める基盤の強化を図りました。これにより、長野県内に点在する高等教育機関の連携関係が格段に進歩し、『高等教育コンソーシアム信州』が開催する各種会議等を効率的に行えるようになりました。また、この講義システムは、授業の共有のみならず、各大学で開催されるFD、フォーラム等の開催にも活用され、教職員が交流する多様な機会を提供できるようになりました。
これまで県内大学間では「単位互換協定」を締結して授業の共同利用を推進して参りましたが、大学間の物理的な距離、学生の移動に関する負担等が障害となり、同制度を利用する学生は少数にとどまっているのが現状でした。しかし、本事業による遠隔授業の実施により学生の利用者数は大幅に増加しました。同遠隔授業の実施にあたっては、『高等教育コンソーシアム信州』の教育部会が中心となり推進してきました。実際に授業を開講するには、各大学で定める「学年暦」「時間割」や授業の開始終了時刻の違い、授業で用いる資料、学生への連絡、成績評価に関して等さまざまな課題があり細部にわたる調整が必要でした。
これらの問題点や課題については、平成23年1月22日に開催しました「第3回FDフォーラム」で、実際に授業担当した教員から授業の工夫、注意点、苦労した点等を含めての発表が行われました。同フォーラムでは、遠隔地で受講する学生の雰囲気が画面を通じてしか把握できないため、通常の授業以上に双方向授業を意識する必要があり、かえって大勢での「講義形式」より少人数による「ゼミ形式」の授業に有効であるとの意見も出されました。それぞれの担当教員が、様々な工夫をして実施した内容は、通常の授業にも大いに参考となるものでした。この遠隔授業は、次年度以降も継続することとしており、本取組で培ったノウハウを活かした授業が数多く展開されることでしょう。
また本事業では、遠隔講義システムを活用し、学生支援の一つとして合同就職説明会、インターンシップ成果報告会が開催され、教職員の交流、研修等としてFD・SDフォーラム、K3茶論等が、各大学の連携によって数多く開催されました。これらの取組は、これまで各大学でそれぞれに開催されていたものを、遠隔システムを活用し共有することができ、多様な機会の提供となりました。
学生ピア・メンター育成キャンプは、高遠青少年自然の家に異なる大学の学生、教職員が集い、研修が行われ、普段接する機会がない他大学の学生や教職員が交流を深める良い機会となりました。
さらに、『高等教育コンソーシアム信州』の英語教育部会では、各大学の英語教育担当者が、定期的に集い、各大学の英語教育の実情について話し合うなかで、清泉女学院大学が開講する「たてなおしの英語」をもとにしたリメディアル教材としての共通教材を制作するに至りました。
以上のように、本事業の取組を通して、課題を抱えながらも各大学が連携出来ること、推進できることが一歩一歩展開されてきており、今後の継続によって更なる発展に繋がることを期待しています。